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CNAPPとは何か——コードからランタイムまで守る統合クラウドセキュリティ

クラウドへの移行は、もはや戦略的な選択の一つではありません。デジタル社会が加速度的に進化するいま、それは事業継続に不可欠な大前提となっています。しかし、クラウドネイティブの活用が進むほど、セキュリティリスクも確実に膨らんでいきます。設定ミス、漏えいしたシークレット情報、過剰な権限設定、脆弱なコード――これらは氷山の一角に過ぎません。クラウド環境が複雑になるほどリスクは見えにくくなり、対処もますます困難になりつつあります。

本記事では、こうした分断されたクラウドセキュリティの課題を解決する「CNAPP(Cloud-Native Application Protection Platform)」について、その仕組みとメリット、そして市場をリードする主要ベンダーの動向まで解説します。

 

課題:バラバラなクラウドセキュリティ

クラウドネイティブ環境のセキュリティを確保する作業は、かつてないほど複雑になっています。多くの企業は、脆弱性スキャナーやポスチャーマネージャー、CI/CD統合、ランタイム保護ツール、アイデンティティ管理などを継ぎ接ぎのように組み合わせたセキュリティ体制に頼らざるを得ないのが実情です。

本来であれば、これらを組み合わせるだけで十分な備えになるはずでした。ところが、現実はそう簡単にはいきません。

<クラウドセキュリティが簡単に実装できない理由>

  • ツール同士が統合されていない
  • 優先順位のつかないノイズだらけのアラートがチームに押し寄せる
  • DevOpsとセキュリティの取り組みが分断される
  • 危険なセキュリティギャップが生まれてしまう可能性がある

市場調査でも、可視性の欠如や一貫性のないポリシー適用、運用の断絶といった課題に直面し、クラウドインフラのセキュリティに苦戦する企業が、これまで以上に増えていると報告されています。

クラウドネイティブセキュリティがうまく機能しないのは、ツールが足りないからではありません。ツール同士がうまく連携していない、それこそが本当の原因なのです。

CNAPPの急成長:なぜ今なのか?

Gartnerの戦略的予測は、この変化のスピードを裏付けています。

  • 2029年までに、統合されたCNAPPを導入していない企業の60%が、クラウド攻撃面に対する十分な可視性を欠き、ゼロトラスト戦略の達成に失敗すると予測
  • 2029年までに、企業の80%以上が、DevOpsのセルフサービスとスケーラビリティを支援するため、中央集約型のプラットフォームエンジニアリングと運用アプローチを採用すると推測(2023年時点では30%未満)。
  • 2029年までに、企業アプリケーションの35%がコンテナ上で稼働するようになり、2023年の15%未満から大きく成長すると見込まれる
    (Gartner 「Market Guide for Cloud-Native Application Protection Platforms」)

こうした変化を背景に、クラウド運用を統一・簡素化しながらセキュリティを強化できるプラットフォームへの需要が、急速に高まっています。

そもそも、CNAPPとは何か?

CNAPP(Cloud-Native Application Protection Platform)とは、クラウドネイティブアプリケーションを、コードからクラウド、そしてランタイムに至るまで、ライフサイクル全体を通じて守る統合型セキュリティプラットフォームのことです。

図1 クラウドネイティブアプリケーションにおける開発者・アーキテクトの責任範囲拡大
Gartner「Market Guide for Cloud-Native Application Protection Platforms」の画像を元に編集

 

具体的には、これまでバラバラに存在していた次のようなセキュリティ機能を、CNAPPが1つに統合・代替していきます。

  • 開発段階におけるIaCスキャンなどのシフトレフトセキュリティ
  • クラウドセキュリティポスチャ管理(CSPM)
  • クラウドインフラストラクチャ権限管理(CIEM)
  • クラウドワークロード保護プラットフォーム(CWPP)
  • ランタイムにおける脅威検出
  • リスクベースの優先順位付けと修復対応

サイロ化した従来のポイントソリューションとは違い、CNAPPはクラウド環境全体のリスクを一元的に可視化できます。その結果、セキュリティチームとDevOpsチーム、プラットフォームチームがそれぞれの立場を超えて連携しやすくなり、部門間の衝突を避けながら、より効率的かつ迅速にセキュリティ課題へ対応できるようになるのです。

(Gartner Peer Insights 「Cloud-Native Application Protection Platforms(CNAPPs)」)

 

CNAPPはなぜ重要なのか

CNAPPを導入すると、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは代表的な5つを紹介します。

 

<CNAPP導入によって得られるメリット>
  • 中央集約されたリスクの可視化
    1つのプラットフォームと統一されたリスクモデルによって、コードや設定、ワークロード、ID、ランタイムにまたがるリスクを、まとめて把握できるようになる
     
  • 優先順位のついた実行可能なアラート
    CNAPPは、数あるアラートの中から本当に重要なリスクを優先的に提示し、具体的な対処方法まで提示。。日々のアラート疲れから、チームを解放できる
     
  • 開発者ファーストのセキュリティ
    CI/CDパイプラインや開発ツールに統合されているため、セキュリティを開発の早い段階から組み込む「シフトレフト」を実現しながら、開発チームのスピードや効率の維持を実現
     
  • 複雑性の軽減
    CNAPPがセキュリティスタック全体を統合し、使用するツールやダッシュボードの数、ベンダーとの契約が減ることで、セキュリティ体制をシンプルに再構築
     
  • コラボレーションの強化
    セキュリティチームやDevOps、アーキテクトが、バラバラなツールチェーンに頼るのではなく、共通の信頼できる情報基盤を通じて連携・協業できるようになる

  

図2 CNAPPのイメージ
Gartner「Market Guide for Cloud-Native Application Protection Platforms」の画像を元に編集

 

CNAPPが実際に解決している課題とは

CNAPPの価値は、クラウドネイティブな環境で組織が実際に直面している、深刻かつ現実的な課題に対して、具体的な解決策を提供してくれる点にあります。

<CNAPPが解決する課題>

  • クラウド環境に潜む構成ミスの可視化
    多層的で複雑なクラウドインフラでは、設定ミス(ミスコンフィグレーション)がどうしても見落とされがちで、重大なセキュリティリスクにつながります。CNAPPを使えば、こうしたリスクを早い段階で検出し、修正することができます。
     
  • 過剰な権限・アクセス管理の最適化
    IDやサービスアカウントへのアクセス制御が適切に行われていないと、内部不正や外部攻撃の温床になりかねません。CNAPPは、過剰な権限の可視化とリスクベースでの最適化を後押ししてくれます。
     
  • 脆弱なコードや依存関係の本番環境への持ち込み防止
    セキュリティが開発プロセスに十分組み込まれていないと、既知の脆弱性を含んだコードやライブラリが、そのまま本番環境にリリースされてしまうおそれがあります。CNAPPは、開発からデプロイまでを一貫したセキュリティ管理でカバーします。
     
  • ランタイム環境での異常検知力の強化
    従来のツールでは難しかった実行時の挙動監視や異常検知も、CNAPPなら高度な可視性とリアルタイム検知機能によって、潜在的な脅威を即座に見つけ出すことができます。
     
  • ツールの乱立とアラート疲弊の解消
    複数のポイントソリューションを併用すればするほど、セキュリティ運用は複雑になり、アラートも氾濫していきます。CNAPPなら、統合されたプラットフォームによって運用負荷を軽減しながら、対応の優先順位付けと効率化を両立できます。
     
  • 分断されたDevSecOpsプロセスの統合
    セキュリティ、開発、運用がそれぞれ別々のツールやワークフローを使っていると、対応の遅れや非効率がどうしても生まれてしまいます。CNAPPは共通のプラットフォーム上で各チームの連携を後押しし、修復対応とデリバリーのスピードを両立させてくれます。

このように、CNAPPはクラウドセキュリティが抱える主要な課題を、1つのインテリジェントな統合プラットフォームでまとめて解決してくれます。コードのコミットから本番運用に至るまで、可視性と制御性を確保しながら、組織全体のクラウドセキュリティ強化と業務効率化を後押ししてくれるのです。

 

CNAPP分野の主要企業とは

CNAPP市場はいま、成熟期を迎えています。その中で、複数の有力企業が先導役を担っています。

図3 世界のクラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム
IDC MarketScape:
Worldwide Cloud-Native Application Protection Platforms (CNAPP) 2025 Vendor Assessment より引用

 

主要企業(IDC 2025 MarketScapeより)

  • Wiz
    急速なイノベーションとスムーズな導入で高く評価されています。
     
  • Google Cloud
    2025年3月18日、GoogleはクラウドセキュリティプラットフォームであるWizを320億ドルで買収することに合意し、2026年3月に買収を正式に完了しました。Wizは現在Google Cloudの一員となり、ネイティブおよびマルチクラウドとの統合を活かして、Googleをクラウドセキュリティ分野における主要プレイヤーへと押し上げています。
    (参考:Google公式ブログ 「Google completes acquisition of Wiz」
     
  • Palo Alto Networks
    ランタイム保護とシフトレフト機能に強みを発揮しています。
     
  • Trend Micro
    検知能力、コンプライアンス対応、可視化のバランスに優れています。
     
  • CrowdStrike & Microsoft
    エコシステムの統合性とスケーラビリティで市場を牽引しています。
     
  • Sysdig, SentinelOne, Aqua Security
    コンテナおよびワークロード保護に特化しています。
     
  • Orca Security, Qualys, Tenable
    CNAPP分野で急速に成長を遂げています。

 

おわりに:クラウドネイティブセキュリティの未来を担う、CNAPP

開発フェーズとランタイム環境を橋渡しし、実際の脅威を優先して検知し、DevOpsのワークフローにセキュリティを直接組み込む――CNAPPによって、長年組織を悩ませてきた多くの課題が解決されていくと感じられたのではないでしょうか。CNAPP市場が急速に成熟していく中、早期に導入した組織は、セキュリティの強化だけでなく、運用の俊敏性向上やチーム連携の強化も同時に手にしているのです。CNAPPは、クラウドネイティブセキュリティの未来を映し出す存在といってもいいでしょう。

クラウドネイティブ環境は、これからも複雑さと動的さを増していきます。それに伴い、リスクも増大していくでしょう。だからこそセキュリティは、後回しにしたりボトルネックにしたりするのではなく、最初から組み込み、自動化し、チーム間で協調しながら運用していく必要があります。

CNAPPが単なるトレンドではなく、戦略的な転換点だと言えるのは、そのためです。CNAPPは、次のようなことを実現してくれます。CISOやDevSecOpsエンジニア、クラウドアーキテクトなど、あらゆる役割の方にとって、CNAPPはこれからのクラウドネイティブセキュリティ戦略の中核を担う存在になっていくはずです。

  

本記事の内容は、公開時点での内容のものです。
実際に導入を検討する際は、各製品・サービスの情報は、公式サイトのドキュメント等をご参照ください。

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