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デジタル庁「FinOpsガイド」解説――ガバメントクラウドのコスト最適化、何から手をつければいい?

「ガバメントクラウドに移行したら、運用経費がむしろ増えた」。そんな声が多くの自治体から聞こえてきます。財政課や議会から説明を求められるものの、クラウドの請求は複雑で、何から手をつければよいのか分からない――。本記事では、そうした悩みをお持ちの自治体職員の方に向けて、デジタル庁が公開している「継続的運用経費最適化(FinOps)ガイド」(GCASガイド)を解説します。

 

 

なぜいま「FinOps」なのか

ガバメントクラウド(ガバクラ)移行後の運用経費の増加は国レベルの課題となっており、デジタル庁は2025年6月に「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策」を公表しました。その対策の一つとして2025年10月に「継続的運用経費削減(FinOps)ガイド」が公開され、2026年2月には内容を再編した「継続的運用経費最適化(FinOps)ガイド」がGCASガイドに掲載されています(今後も随時更新される予定です)。

ガイドはまず、経費増加の主な要因を「実際のコスト上昇によるものというよりも、従来のオンプレミス型の運用方式をクラウド環境に持ち込んでいること」にあると指摘します。

クラウドは、使ったサービスと量に応じて支払う従量課金制です。見積額がそのまま支払額になるわけではなく、運用次第でコストは変動します。裏を返せば、本番稼働後の運用改善によってコストを下げられる余地が大きいということです。「契約したら終わり」ではなく「本番稼働がコスト最適化のスタート地点」。これがガイドを貫く考え方です。 

FinOpsとは――「みんなでコストを見て、直し続ける」こと

FinOpsとは「Finance(財務)」と「DevOps(開発・運用)」を組み合わせた言葉で、ガイドでは「システム運用開始後に、IT部門・実務部門・財務部門が連携して運用経費の継続的な管理と最適化を目指す取り組み」と説明されています。

ポイントは2つあります。1つ目は、一度きりのコストカットではなく「継続的な」取り組みであること。2つ目は、主役がベンダーではなく職員であることです。ガイドも「コスト把握・最適化計画の主体は職員」と明言しています。

とはいえ、職員がすべてを自力でやるという意味ではありません。職員が主体となって事業者に働きかけ、コストを見られる仕組みを整えることが出発点になります。

ガイドの全体像――4つのステップ

ガイドはFinOpsの実践を、図1の4つのステップで整理しています。

図1:ガバメントクラウドFinOpsの4つのステップ
(出典:デジタル庁「継続的運用経費最適化(FinOps)ガイド」を基に作成)

    

意外に思われるかもしれませんが、最初のステップは「契約」です。コスト情報の開示、改善提案、KPIの設定といったFinOpsに必要な要件を、運用保守事業者の調達仕様書・契約にあらかじめ盛り込んでおく。そのうえで「把握→計画→実行」を回し、成果を翌年度の仕様書・契約に反映して支出の削減につなげる。この繰り返しがFinOpsです。ガイドには調達仕様書にそのまま使える「追加文言案」(別紙1)も用意されており、次の契約更新から活用できます。

対象となるコストは大きく2つです。クラウドそのものの料金である「ガバメントクラウド利用料」と、運用保守をベンダーに委託する費用である「運用管理補助委託料」。前者は月次・四半期、後者は年次~複数年のサイクルで改善していきます(図2)。

図2:FinOpsの対象となる2つのコストと主なアプローチ(出典:同ガイドを基に作成)

  

クラウド利用料はこう見直す(STEP2~4)

出発点は可視化です。ガイドによれば、一般的なクラウドのコスト構造では、仮想サーバーとデータベースで利用料の8割を占めます。まずは大きな割合を占める部分から優先的に確認しましょう。自治体には「地方公共団体向けGCASコストダッシュボード」(2025年9月30日公開)が提供されており、月次のコスト推移や利用サービスの割合を確認できます。

共同利用方式における注意点

ただし注意点があります。複数の自治体が同じ環境を利用する「共同利用方式」では、職員はクラウドの管理画面を直接閲覧できません。さらにネットワーク分離・アプリケーション分離の環境では、ダッシュボードの「サービス別コスト」も利用できません。

この場合、按分根拠などの情報提供を運用管理補助者(構築ベンダー)に依頼することになります。ここでも「契約に情報開示を盛り込んでおく」ことが効いてくるわけです。

代表的な削減アプローチとしてガイドが挙げるのは、使用率の低いサーバーのサイズ適正化、夜間・休日に動かす必要のない検証環境などの停止、ストレージや不要なログの棚卸し、稼働率の高い(目安70%以上)リソースへの長期継続割引の適用などです。高度なテクニックの前に、「動かしっぱなし」「持ちっぱなし」をやめる。それだけでも効果が見込めます。

 

運用管理補助委託料はこう見直す(STEP2~4)

こちらの第一歩は、「運用保守作業一式」という見積もり・契約をやめることです。ガイドは、作業項目ごとに頻度・性質(定型/非定型)・価格を明細化したうえで、以下の6つのアプローチで見直すことを示しています。

  1. 見積もりの妥当性確認
  2. 要求仕様の見直し
  3. 不要な業務の特定・廃止
  4. 運用フロー・プロセスの改善
  5. 作業の内製化
  6. 業務の自動化・マネージドサービスへの置き換え

たとえば「夜間休日を含む24時間365日サポートは本当に必要か」「月次の稼働報告書は、職員がダッシュボードを見る運用に変えられないか」「ハードウェア時代の点検作業がそのまま残っていないか」。こうした問いかけだけでも、削減余地は見つかるはずです。

なお、システム変更を伴う自動化などは複数年がかりの取り組みになるため、1年目に作業実績を可視化し、2年目以降の契約に反映していく進め方が示されています。

 

完璧を目指さなくていい――使える支援と現実的な最初の一歩

「うちにはクラウドに詳しい職員がいない」と感じた方もご安心ください。デジタル庁の見積精査支援にはすでに331自治体が手を挙げており、精査が完了した団体ではガバメントクラウド利用料について平均約30%(16~60%)のコスト削減余地が確認されています(「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策の取組状況について」第10回 国地方デジタル共通基盤連絡協議会WT 資料1、2026年3月3日)。

全国でのコスト最適化ワークショップなど、国の支援策も拡充されています。また、職員と事業者だけでの検討が難しい場合には「改善活動を第三者の外部事業者に委託する」ことも、ガイドの中で選択肢として示されています。
まずは、次の3つから始めてみるとよいかもしれません。

  1. GCASコストダッシュボードで、自団体のコストの現状を見てみる
  2. 事業者に、見積もり・運用作業の明細化とコスト情報の提供を求める
  3. 次の契約更新時に、ガイドの追加文言案を参考にFinOps要件を仕様書へ盛り込む
     

まとめ

FinOpsは、特別なツールの導入や高度な技術の話ではなく、「コストを見える化し、職員が主体となって、契約に落とし込みながら回し続ける」仕組みづくりです。ガイドは自治体にとって「コスト削減のヒント集」として十分に実用的です。次回は、クラウドの構築・運用を数多く手がけてきた企業の視点から、このガイドを実行に移す際のポイントと考慮事項を解説する予定です。

 

本記事の内容は、公開時点での内容のものです。
実際に導入を検討する際は、各製品・サービスの情報は、公式サイトのドキュメント等をご参照ください。

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