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自治体DXにおけるガバメントクラウドのコスト最適化とモダナイゼーション

自治体DX推進計画において、「自治体情報システムの標準化・共通化」は、ガバメントクラウドの活用を視野に入れながら順次対応が進められています。本記事では、DX推進におけるクラウド利用の最適化や、クラウド利用でのコスト改善にお悩みの方に向けて、クラウドの最適化・コスト改善へのアプローチに関する知見をご紹介します。

自治体DXにおけるクラウド利用の現状と課題

システム標準化とガバメントクラウドの意義

自治体情報システムの標準化およびガバメントクラウドの活用は、自治体の人的・財政的な負担軽減や、地域の実情に即した住民サービス向上につなげることを目指す取り組みです。急速な人口減少社会に突入するなか、自治体・事業者が個別に情報システムを維持管理し、さらにセキュリティの確保・高度化や大規模災害に備えた対策を実現することは、人材面・財政面からも難しさが増しており、重要な取り組みと位置づけられます(出典:デジタル庁「地方公共団体標準準拠システムのガバメントクラウドの利用について 第3.0版」)。

 

標準化システムの移行状況と運用経費の増加

2025年度末の移行期限に向けて、全国の自治体では住民基本台帳や税務等の20業務について、標準準拠システムへの移行作業が進められてきました。一方、デジタル庁が2025年6月13日に公表した「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策について」によれば、2025年1月末時点で2026年度以降の移行となる見込みの「特定移行支援システム」は2,989システム(全対象システムの約8.6%)にのぼり、事業者リソースの逼迫や移行難易度の高さを背景に、国として概ね5年以内の移行完了を目指して積極的に支援していく方針が示されています(参考:デジタル庁「地方公共団体情報システム標準化基本方針の改定の概要」)。

稼働開始したシステムが増えていくなか、移行後の運用経費の増加は、一部自治体において大きな課題として顕在化しています。中核市市長会が実施した調査では、移行後の運用経費の平均倍率が2.3倍に達し、5割以上の自治体で2倍以上の増加が確認されています(出典:デジタル庁「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策<概要>」)。

従来の環境では発生していなかった、ガバメントクラウド用の接続回線費や運用管理補助委託費などの新たな経費の発生に加え、クラウドの最適化が十分に進んでいない点も要因として挙げられます。これを受けて、デジタル庁を中心に、関係省庁と連携しながら、見積精査支援の強化、財政措置・交付税措置、コスト可視化・分析による競争促進といった総合的な対策が進められています(参考:デジタル庁「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド関連ワーキングチーム資料」)。

コスト増加の要因と注目すべきポイント

デジタル庁はコスト増の要因として「構造的な要因」「機能強化要因」「外部要因」の3つを整理しています(出典:デジタル庁「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策<概要>」)。

特に留意すべき点として、標準化の移行期限を優先するなかで、ガバメントクラウドへの最適化が十分に進まないケースがあることが挙げられます。標準化対応を優先し、既存構成を大きく変えずに移行しているケースもあるため、最適化の度合いにはばらつきがあるのが実情です。加えて、標準仕様書への対応やサービスレベル向上に伴う技術者需要の集中、要求スキルの高度化により、開発・運用に係る費用や工数が増加するケースもあります。

 

コスト増加問題に対する対策

国・デジタル庁の資料では、見積精査支援の拡充、事業者に対する丁寧な見積説明の要請、見積チェックリスト・アプローチガイドの拡充、クラウド利用料の各種割引等の交渉、クラウド利用料の見える化・分析、先行事例の横展開、制度改正に伴う標準仕様書改定ルールの徹底など、複数の対策が示されています。これらを継続的な取り組みとして定着させるためには、自治体、業務システムベンダー、クラウド技術を提供する事業者が連携し、見積精査から運用改善まで一体で進めることが重要です。

 

クラウド利用におけるコスト最適化のアプローチ

段階的なコスト最適化への取り組み

オンプレミスからクラウドへ移行した後、利用状況の可視化やリソース最適化を行わない場合、想定以上にコストが増加するケースがあります。そのため、コストを可視化し、段階的に最適化施策を実施することで、クラウド利用料の適正化を図ることが有効です。

図1 段階的なコスト最適化への取り組み

 

本記事では、段階的なアプローチとして、次の3つのフェーズで整理します。

  • フェーズ1: システム導入前/構成面を含めた見積精査
  • フェーズ2: システム導入後/利用状況の整理と削減ポイントの特定・実行
  • フェーズ3: システム改修/アーキテクチャのモダン化

図2 ガバメントクラウド コスト最適化課題への3フェーズアプローチ

フェーズ1:構成面を含めた見積精査

見積もりの構成を把握し、必要な要件を再確認したうえで、見積チェックポイントを確認します。チェックポイントは「インスタンスタイプ・サイジングの適正化」「稼働時間の適正化」「料金体系の見直し」の3点です。

図3 見積時のチェックポイント

 

クラウドでは、オンプレミスに比べてリソース変更の柔軟性が高いため、今必要なサイズを選択することが基本となります。稼働時間については、業務要件上可能な範囲で、非本番環境の利用時のみの起動や、本番環境における稼働時間・スケーリング設定の見直しを検討します。

料金体系については、利用状況が安定しているリソースに対してSavings PlansやReserved Instancesなどの長期利用割引を活用することで、削減効果が見込めます。自治体の予算・契約ルール上、購入期間やタイミングに制約が生じる場合があるため、運用管理補助者等と事前に検討しておくことが望ましいです。

 

フェーズ2:FinOpsによる継続的最適化

システム稼働後に継続的に最適化を進めるうえでは、FinOps(フィンオプス)の考え方が重要です。FinOpsは、クラウドコストを継続的に可視化・最適化し、費用対効果を高めるための考え方です。自治体においては、予算管理や説明責任の強化にも有効です。

図4 FinOpsの継続的サイクル

ステップ① 可視化

9. AWS Cost Explorerのようなクラウド事業者が提供するツールを活用し、期間別の比較やリソース別の利用料を把握します。ガバメントクラウドの運用形態によっては、自治体がクラウド利用料の詳細を直接確認しにくい場合がありますが、CSV等で出力された利用料データや、デジタル庁が進める見える化・分析の取り組みを活用することで、コスト把握の精度向上が期待できます(参考:デジタル庁 地方公共団体向けガバメントクラウド)。

さらに、Amazon QuickSightなどのBIツールを活用し、CSV等で取得したクラウド利用料データを適切に整備することで、業務・システム単位、課単位、期間別のコスト推移をダッシュボード上で把握しやすくなります。例えば、予算超過の兆候、利用料が急増しているリソース、未使用または低利用の環境を一覧化することで、財政部門、情報システム部門、業務主管部門が共通の情報をもとに改善ポイントを検討しやすくなります。自治体向けダッシュボードとしては、単なる利用料の集計に留まらず、ガバメントクラウド移行後の運用経費を継続的に管理し、見積精査や最適化施策の優先順位付けに活用できる形で設計することが重要です(出典:Amazon QuickSightAmazon QuickSight Documentationデジタル庁 GCASガイド「コスト最適化アプローチガイド」)。

 

ステップ② 最適化

AWS Cost Optimization Hubを活用することで、リソースサイズの見直し、未使用リソースの停止・削除、ストレージ容量の最適化、Savings PlansやReserved Instancesの購入などに関する推奨事項を確認できます。ただし、これらのレコメンデーションは利用状況や構成情報に基づくものであり、業務上の制約やシステム固有の事情を踏まえて、実施可否やタイミングを個別に判断する必要があります。

フェーズ3:アーキテクチャのモダン化

デジタル庁 GCASガイド「コスト最適化アプローチガイド」では、モダン化の方向性として、APIベースのシステム構成、運用のコード化・自動化、ステートレスなアーキテクチャ、マネージドサービスの活用、サービスレベルの定義・計測などが示されています。一足飛びに進めるのではなく、費用対効果の高い取り組みを段階的に取り入れることが重要です。

 

サーバレス・コンテナ化

レガシーシステムでは、技術的負債の蓄積、ドキュメント不足によるブラックボックス化、機能間の依存関係の複雑化といった課題が生じている場合があります。これらに対しては、以下のポイントでアプローチを進めることで、移行リスクを抑えながら、技術習得を進めやすくなります。

<サーバレス・コンテナ化を進めるアプローチ>

  1. アセスメントによる現状分析
  2. Amazon Q Developerなどの生成AI支援ツールを活用したコード理解、ドキュメント作成支援、開発者の技術習得支援
  3. PoCによる小規模・段階的な移行

 

DBモダン化

マネージドDBへの移行は、データベースの種類や利用状況によっては、ライセンス費用や運用負荷の低減につながる可能性があります。AWS Schema Conversion Tool(SCT)は異なるデータベースエンジン間でスキーマを変換するツールであり、テーブルやビュー、ストアドプロシージャなどの変換を支援し、変換できない箇所については評価レポート等で確認できます。

  

モダンIDP

ガバメントクラウドのような閉域網を前提とする環境においても、システム間連携や共通サービス利用の拡大に伴い、認証認可基盤の一元管理は重要性を増しています。KeycloakのようなOSSを活用することで、OIDC、SAML、OAuth 2.0に対応した認証認可基盤を構築でき、システム間連携の認証認可にも活用できます。将来的には、システム間のAPI認証、公共SaaSや共通サービスの認証認可、職員認証などを段階的に統合管理することで、セキュリティ向上、シングルサインオンによるユーザビリティ向上、異動に伴うユーザ棚卸の効率化といった効果が期待できます。

 

まとめ

クラウドの最適化は段階的なアプローチで考え、取り組むことが重要です。フェーズ1(導入前の見積精査)、フェーズ2(導入後の利用状況整理と削減)、フェーズ3(システム改修によるモダン化)を計画的に進めることで、利用団体にとってはコスト適正化、利便性向上、業務負担軽減につながる可能性があり、業務システムベンダーにとってもクラウド対応力や競争力の強化につながります。DX推進の加速に伴い、クラウドの最適利用はより一層重要性を増していきます。

本記事の内容は、公開時点での内容のものです。
実際に導入を検討する際は、各製品・サービスの情報は、公式サイトのドキュメント等をご参照ください。

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