鳥貴族『売上1%の投資で売上10%UP』を目指すDX戦略を支えるSingleStore | Real-Time Data Leaders Forum イベントレポート
2026年7月3日、SingleStore社とJTPの共催による「Real-Time Data Leaders Forum」を開催しました。会場には、リアルタイムデータやAIに関心を持つさまざまな業界の方々、約50名にお集まりいただきました。本記事では、SingleStoreを実際に導入したエターナルホスピタリティグループ 執行役員CDIO 中林 章氏による事例講演の内容をレポートします。

満席の会場で講演する中林氏。鳥貴族が焼鳥屋のイメージをどう変革してきたかを紹介するスライドから講演は始まった。
目次[非表示]
- 1.SingleStoreとは
- 2.登壇者プロフィール ― 製造業・外食チェーンを渡り歩いたCDIO
- 3.“焼鳥”を“YAKITORI”に ― グローバル約1,200店を展開するEHG
- 4.全社DX戦略 ― AIを徹底活用し3つの価値を最大化
- 5.なぜSingleStoreか ― 3種類のレコメンドが要求する3種類のデータ特性
- 6.活用イメージ ― 目標は「2秒以内」のレコメンド応答
- 7.「コピーする時代」から「共有する時代」へ ― AI時代のシンプルアーキテクチャ
- 8.導入評価 ―「これがAI時代のデータ基盤」
- 9.まとめ ― リアルタイムデータ基盤を検討する方へ
- 10.SingleStoreの導入は、JTPがご支援します
- 10.1.JTP SingleStoreソリューション
- 10.2.関連ページ
SingleStoreとは
SingleStoreは、従来は別々のシステムが必要だったOLTP(トランザクション処理)とOLAP(分析処理)を単一のデータベースエンジンで処理できる、次世代型のHTAPデータベースです。インメモリ処理とカラム型ストレージの組み合わせによりミリ秒単位のクエリ応答を実現し、データの複製や移動なしに、常に最新のデータをリアルタイムに分析できます。
- HTAP統合:トランザクションと分析を1つのDBで処理。ETLパイプラインやデータウェアハウスを別途用意する必要がない
- AI・ベクトル検索対応:ベクトル型データをSQLと同じインターフェースで操作でき、RAGや生成AIアプリケーションの構築をデータベースネイティブで実現
- MySQL互換・マルチクラウド:MySQL Wire Protocol互換で既存資産を活かした移行が可能。AWS・Azure・GCPのフルマネージドクラウドやオンプレミス構成にも対応
「リアルタイム性」「分析」「AI」の3つを1つの基盤で扱えるこの特性が、後述するEHGのユースケースと深く結びついています。
登壇者プロフィール ― 製造業・外食チェーンを渡り歩いたCDIO
登壇したのは、鳥貴族・やきとり大吉などを展開する株式会社エターナルホスピタリティグループ(以下、EHG)の執行役員CDIO(Chief Digital Information Officer)、中林 章氏。1992年にパナソニック(旧・松下電器産業)へ入社し約30年を製造業のIT・デジタル領域で過ごした後、2022年にくら寿司へ転職。2025年7月からEHGでグループ全体のDXを統括しています。2026年3月には鳥貴族最大のフランチャイジーであるトラオム株式会社のDXシニアアドバイザーも兼務しており、製造業と外食産業の両方を知る立場からDXを推進している人物です。

講演資料より:中林氏の経歴。パナソニック→くら寿司→EHGと、製造業から外食DXの最前線へ。
“焼鳥”を“YAKITORI”に ― グローバル約1,200店を展開するEHG
EHGは「鳥貴族」「やきとり大吉」を中心に、国内外でグローバル約1,200店舗を展開する外食グループです。台湾・韓国・香港・上海・アメリカなどへ進出しており、長期ビジョンとして「Global YAKITORI Family」――“焼鳥”を“YAKITORI”として世界言語にすることを掲げています。

講演資料より:グローバル約1,200店。日本・中国・韓国・米国を1st Zoneとして世界展開を加速する。
講演の序盤では、昭和の「中年男性向け・カウンター席・煙たい店内」という焼鳥屋のイメージを、鳥貴族が「女性・若者向けメニュー、入りやすい外装、テーブル席中心のきれいな店内」へと変革してきた歴史や、顧客セグメント別の注文ランキング分析(一人食事は“たれ”系、ひとり呑みは“飲み+つまみ”、会社員は“シェア”傾向など)も紹介され、データで顧客を捉える文化がすでに根付いていることがうかがえました。
全社DX戦略 ― AIを徹底活用し3つの価値を最大化
本題のDX戦略について中林氏は、「“Global YAKITORI Family + DX”で世界の外食市場への挑戦を加速する」と説明。DX戦略投資を実施し、AIを徹底活用することで「お客様価値」「企業価値」「社員生産性」の3つの最大化を図るとしています。

講演資料より:現中期経営計画(25/7期~27/7期)で全社DXプロジェクトをKickOffし、EHGデジタルプラットフォームを構築。
次期中計ではデータ&AIの自律化フェーズへ。
タイトルにある『売上1%の投資で売上10%UP』は、このDX戦略投資の費用対効果を端的に表す目標です。フロントエンド業務(開発・マーケ・購買・営業)の進化とバックエンド業務(経理・人財・法務・総務)の標準化を、データ&AI活用で支える構図が示されました。
目指すのは「セルフ化」ではなく「ホスピタリティDX」
興味深いのは、EHGのDXが単なる効率化・セルフ化を目指していない点です。中林氏は外食店舗の進化を「おもてなし(店員による接客)」→「セルフ店舗(効率化店舗)」→「ホスピタリティDX(人とデジタルでおもてなし)」の3段階で整理。セルフ化はタイパ・コスパに優れる一方で、顧客が「常に一見さん」になってしまう。そこで人とデジタルの力を掛け合わせ、“明るく楽しい外食体験”と常連さんづくりを両立するのがホスピタリティDXだと説明しました。

講演資料より:DX戦略 進化モデル。デジタル・AIの進化以上に「人が成長・主役」であることを差別化ポイントに掲げる。
なぜSingleStoreか ― 3種類のレコメンドが要求する3種類のデータ特性
ではその戦略の中で、なぜデータ基盤としてSingleStoreを選んだのか。中林氏が挙げた象徴的なユースケースが、居酒屋の「飲み会終盤シーン」です。グラスが空いたタイミングでスタッフが「もう一杯いかがですか?」と声をかけられるかどうか。そのひと声が追加注文=売上と、会話の盛り上がり=顧客満足の両方をつくる。この「声かけ」をデータとAIで支援し、“今、この瞬間”に最適なレコメンドを実施することがSingleStore導入の狙いです。
実現したいレコメンドは次の3種類です。
- 再注文レコメンド:過去注文商品にもとづくパーソナライズ分析。リアルタイムに1件別データを扱う行指向の処理
- クロスセルレコメンド:アソシエーション分析による類似商品の提案。分析(特徴量)データを扱う列指向の処理
- 継続レコメンド:AIインテリジェント分析による自律型の提案。組合せデータを扱う行×列指向/ベクトルの処理

講演資料より:3つのレコメンドはそれぞれ行指向・列指向・ベクトルと異なるデータ特性を要求する。
これを1つのDBでリアルタイムに処理できることがSingleStore採用の決め手。
POINT ― リアルタイムデータ基盤検討者の視点
行指向(OLTP)・列指向(OLAP)・ベクトル検索は、従来なら別々のデータベースを組み合わせて実現する領域です。3つのワークロードを単一DBでリアルタイムに処理できる点が、複数DB構成に対するSingleStoreの本質的な差別化として提示されました。
活用イメージ ― 目標は「2秒以内」のレコメンド応答
システム構成としては、AWS上のSingleStoreに顧客のリクエスト(予約・来店・注文などの顧客行動)を連携し、リアルタイムでレコメンドを返す設計です。応答時間の目標はエンドツーエンドで2秒以内、うちSingleStoreのDB処理は0.5秒。取引・顧客・商品・マーケといったリアルタイム性の高いデータはSingleStoreが受け持ち、食材発注・シフト・調理時間などのオペレーションデータはDataRobot(AWS上)で分析、その分析結果を再びSingleStoreに還流させる役割分担が示されました。

講演資料より:認知→予約→来店→注文→食事→会計というカスタマージャーニー全体にSingleStoreを連携。
店舗マネジメント(売上・粗利)と会社マネジメント(財務・業績)の両方に活用する。
AI成熟戦略 ― ルールベースから自律型経営へ
レコメンドは一足飛びに実現するのではなく、段階的に成熟させる計画です。顧客体験の領域では「1st:ルールベース(注文実績からの提案)→ 2nd:データ分析(類似商品の提案)→ 3rd:AIエージェント最適化(会話型注文支援)」というステップを設定。同様に、店舗オペレーション、プロセス連携、マネジメントの各領域でも、最終的にはAIエージェントによる自動判断・自律型経営を目指すロードマップが示されました。

講演資料より:AI成熟戦略。「人依存から脱却し、AIを活用し高収益・高付加価値経営へ」。
3つのレコメンドは顧客体験領域のステップに位置づけられている。
「コピーする時代」から「共有する時代」へ ― AI時代のシンプルアーキテクチャ
講演終盤では、SingleStoreがもたらすアーキテクチャ上の変化が語られました。従来の構成では、行指向DB・列指向DB・ベクトルDB・ドキュメントDBを用途別に立て、API/ETL/ファイル転送でデータをコピーして連携させる必要がありました。SingleStoreの「OneDB」アプローチでは、1つのデータベースにデータを置き、アプリケーション・BI・AIがリアルタイムにそれを共有します。データ連携層そのものを大幅に削減できる、というのが中林氏の整理です。

講演資料より:データを“コピー”する時代から“共有”する時代へ。
高速性能だけでなく、リアルタイム化・開発効率化・運用自動化・セキュリティ・シンプルアーキテクチャの5つのメリットを挙げた。
メリットとして挙げられたのは、Pipeline/Real-Time RAGによるリアルタイム化、Workspace・Branch・Notebook・APIによる開発効率化、Management API・監視・バックアップ/リカバリによる運用自動化、RBAC(ロールベースアクセス制御)によるセキュリティ、そしてOne Databaseというシンプルなアーキテクチャの5点です。
導入評価 ―「これがAI時代のデータ基盤」
講演の締めくくりに、中林氏はSingleStore活用に向けた評価を「私見」として率直に共有しました。

講演資料より:中林氏によるSingleStoreの評価。
最小限のチューニングで高速な性能が得られる
データをコピーして連携するアーキテクチャから、1つのデータをリアルタイムに共有するアーキテクチャへの変革
開発者には「つくりやすさ」を、運用者には「管理しやすさ」を提供する
そのうえで、「これがAI時代のデータ基盤」という言葉で講演を結びました。
まとめ ― リアルタイムデータ基盤を検討する方へ
本講演から、リアルタイムデータ基盤の検討に役立つポイントを3つに整理します。
ユースケース起点 | 「飲み会終盤のひと声」という現場の1シーンから要件(2秒以内の応答)を定義し、そこから基盤を選定する。技術起点ではなく体験起点のアプローチ。 |
|---|---|
ワークロードの統合 | 行指向・列指向・ベクトルという異なるデータ特性の処理を単一DBに統合することで、データコピーと連携層の複雑さを排除する。 |
段階的なAI成熟 | ルールベース→データ分析→AIエージェントと段階を踏む前提で、最初から将来のワークロード(ベクトル検索・リアルタイムRAG)に耐える基盤を選ぶ。 |
「デジタル・AIの進化以上に、人が成長し主役であり続ける」――ホスピタリティ産業ならではの哲学と、最新のリアルタイムデータ基盤が組み合わさったEHGの挑戦は、業界を問わず、これからデータ基盤を検討する方にとって示唆に富む事例と言えるでしょう。
SingleStoreの導入は、JTPがご支援します
本フォーラムを共催したJTPは、SingleStore社の正規リセラーとして、SingleStoreの導入から運用までを一貫してご支援しています。EHG様の事例のようなリアルタイムデータ基盤の構築を、日本語での専門サポートのもとで検討いただけます。
- PoC設計・実施:要件ヒアリングと現状分析、PoC環境の構築、既存DBとのベンチマーク比較、移行計画の策定まで
- 初期導入・移行支援:本番環境のアーキテクチャ設計、MySQL互換を活かした移行コストの最小化、DBA・開発者向けトレーニング
- 運用・継続改善サポート:日本語での技術サポート、パフォーマンスモニタリング、定期ヘルスチェック、アップグレード支援
また、マルチAIエージェント時代のデータ基盤として、エージェントの共有メモリ・ベクトルDB・分析基盤にSingleStoreを活用するアーキテクチャ設計のご支援も行っています。リアルタイムデータ基盤やAIエージェント基盤をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
JTP SingleStoreソリューション
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関連ページ
本記事は、2026年7月3日開催「Real-Time Data Leaders Forum」(SingleStore社・JTP株式会社 共催)における、株式会社エターナルホスピタリティグループ 執行役員CDIO 中林 章氏の講演内容をもとに構成しています。スライド画像は登壇者の承諾を得て掲載しています。

